(……なんて考えてる場合じゃなかった! 珠莉ちゃん待たせてるのに!)

 しかも、彼女に会わずに純也は帰ってしまった。どちらにしても、怒られることは予想がつく。けれど、彼女の元に戻らないわけにもいかない。

(はぁー……、珠莉ちゃんになんて言い訳しよう?)

 足取り重く、愛美が寮に帰っていくと、ちょうど補習授業を終えたさやかと珠莉も戻ってきた。

「愛美ー、おつかれ。補習終わったよー」

「愛美さん、今日はどうもありがとう。ムリなお願いをしてごめんなさいね。――ところで愛美さん、純也叔父さまはどちらに?」

(う……っ!)

 珠莉にいたいところを突かれ、言い訳する言葉も思いつかない愛美はしどろもどろに答える。

「あー……、えっと。なんか急に帰らないといけなくなったっておっしゃって、ついさっき帰っちゃった……よ」

「はあっ!? 『帰られた』ってどういうことですの!? 私、言いましたわよね。補習が終わる頃に知らせてほしい、って」

(ああ……、ヤバい! めちゃくちゃ怒ってる!)

 怒られる、と覚悟はしていた愛美だったけれど、予想以上の珠莉の剣幕(けんまく)にはさすがにたじろいだ。

「純也叔父さまはあの通りのイケメンですし、気前もいいしで女性からの人気スゴいんですのよ! あなた、叔父さまを横取りしましたわね!?」

「別にそんなワケじゃ……。珠莉ちゃんには連絡しようとしたの。でも、純也さんに止められて」

「純也〝さん〟!?」

「まあまあ、珠莉。もしかしてアンタ、叔父さまにお小遣いねだろうと思ってたんじゃないの? だからそんなに怒ってるんだ?」