「こんなに可愛い一人娘を遺して亡くなってしまって。ご両親はさぞ無念だったろうなあ……」
「…………可愛いだなんて、そんな。でも嬉しいです」
(――あ、まただ。何だか胸がキュンって。コレって何? わたし、どうなっちゃってるの?)
彼に優しい言葉をかけられるたび、笑いかけられるたびに、愛美の心はザワつく。
でも、それは決して不快ではなくて。むしろ心地よい感覚だった。
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――信じられないことに、注文した品を二人がすっかり平らげてしまった頃。
「すみません、純也さん。わたし、ちょっとお手洗いに」
「ああ、うん。どうぞ」
――ものの数分で愛美が戻ってくると、純也はスマホに誰かからの電話を受けていたようで、せわしなく通話を終えようとしているところだった。
「愛美ちゃん、すまない。僕はここの支払いを済ませたら、急いで帰らなきゃならなくなったんだ。だから今日、珠莉に会う暇がなくなった」
「えっ、そうなんですか? 大変ですね」
純也は急いで席を立つと、レジで二人分の支払いをしてくれた。愛美も後ろからついていく。
「愛美ちゃん、今日はありがとう。楽しかったよ。珠莉によろしく伝えておいてくれるかな?」
「はい、もちろんです」
「よろしく頼むよ。じゃあまた」
「……はい。また」
純也は車が迎えに来るらしく、駆け足で校門の方まで行ってしまった。
(…………また? 〝また〟ってどういうこと?)
彼をポカンと見送っていた愛美は、首を捻った。
普通に考えたら、今日は会えなかった姪の珠莉に会うために〝また〟来るという意味だろう。でも、もしもそういう意味じゃないとしたら……。