「いいね、それ。じゃ、イチゴタルトとシフォンケーキと、マドレーヌとチョコアイスを二人分。あと紅茶も。ストレート……でいいのかな?」
「あ……、はい」
愛美は訊かれるまま返事をしたけれど、メニューも見ないでドッサリ注文した純也に肝が冷えた。
店員さんはオーダーを伝票に書き取り、さっさと引き上げていく。
(えーっと、コレ全部でいくらかかんの?)
彼女はメニューに書かれた価格とにらめっこしながら、頭の中で電卓を叩いてみた。
(イチゴタルトが六百五十円、シフォンケーキが四百円、マドレーヌが百五十円、チョコアイスが二百円、紅茶が四百五十円。これを二倍すると……、三千七百円! 一人前で千八百五十円!?)
先ほども言ったけれど、愛美は現在金欠である。「自分の分だけでも払おう」と思っていたけれど、この金額ではそれもムリだ。
「純也さん……。ちょっと頼みすぎじゃないですか?」
「大丈夫だよ。支払いは僕が持つって言っただろう? それに、僕は甘いものが好きでね。いつもこれくらいの量は平らげちゃうんだ」
「はあ、そうですか。――じゃあせめて、珠莉ちゃん呼びましょう。そろそろ補習も終わる頃だと思うんで」
愛美がポケットからスマホを取り出し、珠莉に連絡を取ろうとすると、純也に止められた。
「いや、いいよ。高校生がカフェイン摂りすぎるのはよくないし、あまり姪には気を遣わせたくないんだ」
「あの……、それ言ったらわたしも同じ高校生なんですけど」
今日知り合ったばかりの相手なのに、ついツッコミを入れてしまう愛美だった。