****

 ――学校内の広い敷地を歩き回ること、三十分。

「愛美ちゃん、この学校は広いねえ。ちょっと疲れたね。どこか休憩できる場所はないかな?」

 純也が愛美を気(づか)い、そう言ってくれた。
 実は愛美も、少し休みたいと思っていたところだったのだ。

「はい。じゃあ……、あそこの松並木の向こうにカフェがあるんで、そこでお茶にしませんか? 行きましょう」

「うん」

 純也が頷き、二人は歩いて三分ほどのところにあるカフェに入った。

「――なんか、今日は()いてるね。いつもこんな感じなの、ここは?」

 月(なか)ばのせいか、店内はガラガラに空いていた。

「いえ。多分、月半ばだからみんな金欠なんじゃないですか。お家から仕送りがあるの、大体二十五日以降ですから」

「ああ、なるほど」

(そういうわたしのお財布(サイフ)の中身も、そろそろピンチなんだけど)

 愛美は自分の財布を開け、こっそりため息をつく。
 〝あしながおじさん〟から今月分のお小遣いが現金書留で送られてくるのも、それくらいの頃なのだ。

「愛美ちゃん、支払いのことなら心配しなくていいよ。ここは僕が払うから」

「えっ? ……はい」

 またも表情を曇らせていた愛美を気遣い、純也はそう言ってくれたけれど。全額彼に払ってもらうのは愛美も気が引けた。
 金額次第では、自分の分くらいは自分で……と思っていたのだけれど。

「すみません。ここのオススメは何ですか?」

 純也はテーブルにつくなり、女性店員に声をかけた。

「そうですね……。季節のフルーツタルト、シフォンケーキ、あと焼き菓子やアイスクリームなんかも人気ですね」