純也と二人、応接室を出た愛美は彼を案内して歩きながら、彼と話をしていた。

「――あれが体育館で、あの建物が図書館です。で、あの大きな建物は大学の付属病院で、その先は大学の敷地になります」

「へえ、大学はまた別の敷地なんだね。じゃあ、学生寮も高校とは別?」

「はい。だから、進学したら寮も引っ越すことになるそうです」

 もう入学して一ヶ月以上が経過しているので、愛美も学園内の建物の配置はほぼ頭に入っている。 

「――ところで、純也さんってすごく背がお高いんですね。何センチくらいあるんですか?」

 まず彼女が訊ねたのは、彼の身長のこと。
 応接室のソファーに腰かけていた時の座高も高かったけれど、こうして並んで歩いていると四十センチはありそうな彼との身長差に愛美は驚いたのだ。

「百九十センチかな。ウチの家系はみんな背が高くなる血筋みたいでね」

「ああ、分かります。珠莉ちゃんも背が高いですもんね」

 ちなみに、珠莉の身長は百六十三センチらしい。

「わたしは百五十しかなくて。だから珠莉ちゃんが羨ましいです」

 愛美はよく、「小さくて可愛い」と言われるけれど。本人はあまり嬉しくない。「せめてあと五センチはほしい」と思っているのだ。

「まだ成長途上(とじょう)だろう? これからまだ伸びるんじゃないかな。だから気にすることないと思うけどな、僕は」

「はい……。そうですよね」

「ご両親も小柄な人だったの?」

「さあ……。わたし、施設で育ったんです。両親はわたしがまだ物心つく前に亡くなったらしくて」