「うん。またご飯の時にねー」

 愛美も立ち上がって、部屋の入り口までさやかを見送りに行った。……といっても、部屋は隣り同士なのでけれど。

「わたしも着替えなきゃ」

 そういえば愛美も制服のままだった。
 長袖のカットソーとデニムパンツに着替えると、勉強机の上に国語の宿題を広げる。

(そういえば今日、国語の先生に()められちゃったな……)

 宿題を片付けながら、愛美は思い出し笑いが止まらない。
 それは、この日の国語の授業が終わった後のこと。愛美は国語の教科担当の女性教諭に呼び止められたのだ。

 ――『相川さん、ちょっといい?』
 ――『はい。何でしょうか?』

 女性教諭はニコニコしながら、愛美にこう言った。

 ――『中間テストの最後の問題に出したあなたの小論文なんだけど、着眼点が面白かったわ。なかなか独創性豊かだったわよ。あなたは確か、小説家になるのが夢だったわね?』
 ――『はい、そうですけど』
 ――『やっぱりね。だからなのね、発想がユニークなのは。あなたになら、面白い小説が書けそうね。私も楽しみだわ』
 ――『ありがとうございます!』

 定年間近の女性教諭は、どことなく〈わかば園〉の聡美園長に似ている。愛美のお気に入りの先生の一人だ。
 そんな先生から期待されたら、愛美にもますます「頑張ろう!」という意欲が湧いてくるというものである。

「よぉーっし! これからもっと文章力磨くぞー♪」

 愛美は俄然(がぜん)やる気になったのだった。