「なるほど……。ありがと、さやかちゃん! わたしもやってみる!」

 愛美はさやかにスマホを返してもらうと、早速検索エンジンに「あいみょん」と打ち込んでみた。

「へえ……、こういう人なんだ。一つ知識が増えた。ありがとね、さやかちゃん!」

「いいのいいの。また何か分かんないことあったら訊いてね」

「うん!」

 知らなかったことを一つ知れたことももちろんだけれど、スマホを通じてまたさやかと親しくなれたことが、愛美は嬉しかった。

「――ところでさ。夏休みの予定ってもう決まってる? 行くとこあんの?」

 さやかが唐突に話を変えた。まだ五月の半ばだというのに、早くも夏休みの話題を持ち出す。

「ううん、まだ何も。おじさまに相談しようとは思ってるけど……。施設に帰るわけにもいかないし」

「だよねえ」

 どうやらさやかも、愛美がそう答えるらしいことは予想していたようだ。

「? 何が訊きたいの、さやかちゃん?」

「いや、せっかく女子高生になったのにさあ、女子校だと出会いがないなあと思って。夏休みになれば、恋のチャンスもあるかなーって」

「恋……」

 愛美の口からは、それ以上の言葉が出てこない。何せ、恋の経験が全くないのだから。

「ねえ、愛美のいた施設って男の子もいたよね? そこから恋に発展したりは?」

「ええっ!? ないよお。施設にいた男の子はみんな兄弟みたいなもんだったし」

「じゃあ、中学までの同級生とかは? 男女共学だったんでしょ?」

 さやかはなおも食い下がる。