(この住所で秘書さんの名前にして届くってことは、もしかして同じ家に住み込んでるのかな……?) 

 そんな疑問を抱きつつも、愛美は書き終えた手紙を横長の封筒に入れ、あて名を〈久留島栄吉様方 田中太郎様〉と書いた。
 切手はここまで来る途中の郵便局で買った、きれいな切手シート。十枚が一シートになっていて、八四〇円だった。
 果たしてこの切手シートがいつまでもつか。きっと新しい発見があるたびに、あしながおじさんに手紙を書くんだろうなと愛美は思った。

****

 この手紙は翌日にポストに投函し、そのさらに翌日――。

 クローゼットの鏡の前で、愛美は真新しい制服に身を包んだ自分の姿を感慨(かんがい)深げに見つめていた。

(いよいよ、わたしの高校生活が始まるんだ――!)

「愛美ー、そろそろ行くよー」

「うん、今行くよ!」

 廊下からさやかの呼ぶ声がする。黒のハイソックスのよれを直してから、愛美は返事をした――。