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 ――夕食と大浴場での入浴を済ませると、愛美は机の前に座った。
 ちなみにこの寮にはそれぞれの部屋にも浴室があり、どちらで入浴しても自由なのだけれど、それはともかく。

 新品の横書き便箋の表紙をめくり、ペンを取ってしばし悩む。

(手紙ってどう書いたらいいんだろう?)

 考えてみたら、愛美はこれまでに手紙らしい手紙を書く機会がほとんどなかった。そのため、ちゃんとした書き方を知らないのだ。

 悩んだ末、思ったことをそのまま書こうと結論づけ、便箋にペンを走らせた。

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『拝啓、心優しい理事さま

 横浜の茗倫女子大付属高校に到着しました。ここに来るまでは初めての経験が多くて、ワクワクしました。
 この学校は大きくて、まだどこにどんな建物があるのか把握(はあく)しきれていません。ちゃんとわかったら、お知らせしたいと思います。
 そして、学校生活についても。今はまだ土曜日の夜です。入学式は月曜日ですが、「これからよろしくお願いします」という気持ちをこめて、まずは一言ご挨拶したかったんです。
 このお話を聞いてから半年間、わたしはあなたのことをずっと考えてきました。「一体どんな人なんだろう?」って。
 でも、あなたに関する情報がほとんどないので困っています。偽名だって、〝田中太郎〟なんて「いかにも偽名です!」みたいなお名前でしょう?