「いいよ、教えてあげる。愛美の部屋に行ってもいい?」

「うん! ありがと、さやかちゃん!」

 愛美は大喜びで、さやかの両手を握った。さやかは成り行き上ルームメイトになった珠莉に一声かける。

「じゃあ珠莉、あたしちょっと隣りに行ってくるから」

「あらそう。どうぞご自由に」

 珠莉は素っ気ない返事をしただけ。――まあ、まだ知り合ったばかりだし、そう簡単に打ち解けるわけがないだろうけれど。

「何あれ? カンジ悪~! ……まあいいや。行こう、愛美」

「う、うん」

 戸惑う愛美を連れ、さやかは愛美の部屋へ。

「――スマホって、手に持ってるそれ? ちょっと貸して?」

「うん」

 愛美が手渡すと、さやかは自分のスマホと見比べる。

「あ、これ、あたしのとおんなじ機種だ。だったら何とかなるかも」

「ホント?」

 さやかは手際よく、いくつかの操作をして愛美にスマホを返した。

「とりあえず、取扱説明書のアプリ入れといたから。困った時はそれ開くといいよ。あと、あたしと珠莉のアドレスも登録しといたから」

「ありがとう、さやかちゃん」

「いいってことよ☆ 友達じゃん、あたしたち」

 友達……。まだ今日出会ったばかりなのに、さやかは愛美のことをそう言ってくれた。

「うん……、そうだよね」

 高校生活スタートの日に、早くも友達が一人できた。愛美は早速、この喜びを〝田中太郎〟氏に手紙で知らせようと思った。