せっかく与えられたチャンスを逃してなるものか! とばかりに、愛美はもう一度頷いた。
「……分かりました。もう、先生には負けましたよ! それじゃ、題材は自由ですので、先生が『書きたい』と思われた題材で書いて下さい。取材もご自分で」
「はい。任せて下さい」
「ですが、あんまりムリはしないように。いいですね? 先生の本業は、あくまでも高校生なんですから」
「分かってます。――あの、お会計はわたしが」
愛美が伝票を取ろうとすると、岡部さんが「待った」をかけた。
「いえ、いいですよ。僕が持ちます。後から経費で落としますから」
「……ありがとうございます。それじゃ、お言葉に甘えて」
愛美は素直に引き下がる。
このごろは、誰かに甘えることにあまり罪悪感を覚えなくなった自分がいる。それは、やっぱり純也さんとの出会いと関係があるんだろうか。
(そういえば、純也さんに初めて会った時は、お茶をおごってもらうのが申し訳ないって思ってたのになぁ……)
あれからまだ一年半ほどしか経っていないというのに、人というのは変われば変わるものだ。
あの頃はまだ、養護施設出身だという自分の境遇に多少は負い目を感じていたのかもしれない。それがなくなってきたということは、だいぶ一般社会に溶け込んできたということだともいえる。
自分には、甘えられる相手がいる。だから、片意地はって突っ張る必要はないんだ、と。
「――それじゃ、失礼します」
まだ昼下がりで外は明るいけれど、早く寮に帰って親友二人にこのことを知らせたい。電話でもメッセージでもなく、顔を見て。
「今日はわざわざ横浜まで来て頂いて、いいお話まで頂いてありがとうございました。東京まで気をつけて。――編集者さんって大変ですね」
「いえいえ! 仕事ですから。それじゃ、また短編の仕事の時に」
「はい」
店を出たところで岡部さんと別れた愛美は、学校のある方へウキウキしながら歩き始めた。途中、スキップなんかしながら。
「こんなに早く、本を出す機会に恵まれるとは思わなかったなぁ♪ ……あ、そうだ!」
「……分かりました。もう、先生には負けましたよ! それじゃ、題材は自由ですので、先生が『書きたい』と思われた題材で書いて下さい。取材もご自分で」
「はい。任せて下さい」
「ですが、あんまりムリはしないように。いいですね? 先生の本業は、あくまでも高校生なんですから」
「分かってます。――あの、お会計はわたしが」
愛美が伝票を取ろうとすると、岡部さんが「待った」をかけた。
「いえ、いいですよ。僕が持ちます。後から経費で落としますから」
「……ありがとうございます。それじゃ、お言葉に甘えて」
愛美は素直に引き下がる。
このごろは、誰かに甘えることにあまり罪悪感を覚えなくなった自分がいる。それは、やっぱり純也さんとの出会いと関係があるんだろうか。
(そういえば、純也さんに初めて会った時は、お茶をおごってもらうのが申し訳ないって思ってたのになぁ……)
あれからまだ一年半ほどしか経っていないというのに、人というのは変われば変わるものだ。
あの頃はまだ、養護施設出身だという自分の境遇に多少は負い目を感じていたのかもしれない。それがなくなってきたということは、だいぶ一般社会に溶け込んできたということだともいえる。
自分には、甘えられる相手がいる。だから、片意地はって突っ張る必要はないんだ、と。
「――それじゃ、失礼します」
まだ昼下がりで外は明るいけれど、早く寮に帰って親友二人にこのことを知らせたい。電話でもメッセージでもなく、顔を見て。
「今日はわざわざ横浜まで来て頂いて、いいお話まで頂いてありがとうございました。東京まで気をつけて。――編集者さんって大変ですね」
「いえいえ! 仕事ですから。それじゃ、また短編の仕事の時に」
「はい」
店を出たところで岡部さんと別れた愛美は、学校のある方へウキウキしながら歩き始めた。途中、スキップなんかしながら。
「こんなに早く、本を出す機会に恵まれるとは思わなかったなぁ♪ ……あ、そうだ!」