「えっ? さやかちゃんのお父さん、社長さんなの? スゴーい☆」
愛美はさやかの父親の職業を知ってビックリした。こんなに姉御肌でオトコマエな性格の彼女も、実は社長令嬢だったなんて……!
「じゃあ、さやかちゃんもお嬢さまなの?」
「いやいや。そんないいモンじゃないよ、あたしは。お父さんの会社だってそんなに大きくないし。〝お嬢さま〟っていうんなら、珠莉の方なんじゃないの? ね、珠莉?」
「えっ、そうなの?」
確かに、珠莉は初めて見た時から、住む世界の違う人のように感じていたけれど。
「うん。だってこの子、超有名な〈辺唐院グループ〉の会長さんのご令嬢だもん。そうだよね、珠莉?」
「ええ。確かに私の父は〈辺唐院グループ〉の会長だけど」
「へえ……。っていうか、〈辺唐院グループ〉って?」
山梨の山間部で育ち、しかも施設にいた頃はあまりTVを観る機会もなかった愛美にはピンとこない。
「旧財閥系の名門グループだよ。いくつも大きな会社とかホテルとか持ってるの。すごいセレブなんだー」
「スゴい……」
(やっぱり住む世界が違うなあ。わたし、ここでやっていけるのかな?)
中にはさやかみたいな子もいるかもしれないけれど、この学校の生徒は多分、ほとんどが名門とかいい家柄に生まれ育ったお嬢さまだ。
その中に一人、価値観の違う自分が放りこまれたことを、愛美は不安に感じた。