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 ――そして、無事に期末テストも終わった。
 愛美は今回も学年で五位以内に入る成績を修め、さやかと珠莉も前回の中間テストより順位を上げた。

「やっぱり、冬休みは何の心配ごともなくめいっぱい楽しみたいもんね」

 テスト前、さやかはそう言っていた。愛美も珠莉も気持ちは同じだったので、テスト勉強にも俄然やる気が出たのだ。

 そして……。

 ――あと二週間ほどで冬休みに入る、短縮授業期間のある日の午後。

「――相川先生、次回作についてなんですが……」

「はい」

 新横浜駅前のカフェで、愛美は担当編集者の岡部さんと向かい合っていた。

「先生もそろそろ、長編書下ろしに挑戦してみませんか? 誌面への掲載ではなくて、単行本として出版することになりますが」

 三十代半ばくらいの岡部さんは、ホットのブラックコーヒーをふぅふぅ言いながら飲み、そう切り出した。彼は猫舌らしい。

「えっ、長編?」

 こちらは猫舌ではない愛美は、ホットのカフェラテを飲もうとして、カップを手にしたまま目を見開いた。

「はい、長編です。短編ばかり書いてても、先生も張り合いがないでしょうし。目指すところはやっぱりそこなんじゃないかと思いまして」

「そうですね……、やっぱり本は出したいかな。わたしの夢を応援してくれてる人たちの目に留まるのは、雑誌より単行本の方がいいですから」

 愛美はラテをすすりながら、聡美園長や純也さん、さやかや珠莉の顔を思い浮かべる。そして、彼らが自分の著書を手に取って微笑む姿を。

「そうでしょう? まあ、出版は急ぎませんので、まずは一作お書きになってみて下さい。それまでの間は、これまで通りに短編のお仕事も並行して続けて頂くという形でいいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。やってみます」

「学業の方もあるのに、本当に大丈夫ですか?」

 ましてや、愛美は奨学生なのだ。もちろん、彼もそのことを知っているからこその心配である。

「大丈夫。できます!」