「――あら、このドレス、ステキじゃない? おじさまはセンスがよくていらっしゃるわ」

 珠莉が愛美に広げて見せたのは、オーバルネックで七分袖のワインレッドのドレス。丈は膝丈で、花の模様が編み込まれた袖はバルーン仕立てで透け感のあるレース生地になっている。
 ウエストではなく胸の下で切り替えが入ったデザインで、エレガントすぎず、それでいて子供っぽすぎない。小柄な愛美にはよく似合いそうだ。

「あっ、こっちは靴と……黒のストッキングだよ」

「あら、それ! 有名ブランドの高級なストッキングよ。私も愛用してるのよ」

「えっ、そうなの? おじさま、そんなものにまで気を遣ってくれたんだ」

 ストッキングにもブランドものがあるなんて、愛美はまったく知らなかった。
 確かに、コンビニなどでも買えるようなストッキングとは、肌触りが全然違う。それでいて丈夫そうである。

 靴もハイブランドのもののようで、上品なダークレッドのパンプス。ヒールは少し高め。これくらいの高さだったら、愛美も履くのは怖くない。

「こっちはアクセサリーかな? ……わあ、可愛いネックレス☆」

 愛美が開けた細長い箱には、ハート型のシンプルなトップがついたプラチナのネックレスが入っていた。彼女はこれ見よがしな大きなアクセサリーが好きではないので、これくらい控えめなものでよかったと思う。

 あと二つの包みは、クリーム色のクラッチバッグと白いファーの襟巻きだった。

「これでパーティーの準備はバッチリね、愛美さん」

「うん! スゴいなぁ、ホントに全部そろっちゃうなんて。その分、おじさまには思いっきりお金使わせちゃったみたいだけど」

 〝あしながおじさん〟がここまで大盤振る舞いしてくれたのは、愛美の学費が免除になって、学校に送金する分が浮いたからかもしれないけれど。このプレゼントに使った分だけで、その金額はゆうに超えていそうだ。

「でも、きっとおじさまは愛美さんに喜んでもらいたくて、お買いになったのよ。だからあなたが責任を感じる必要はなくてよ」