親族間の問題は、愛美に解決できるものじゃない。それは純也さん自身が何とかするしかないのだ。

 それに、もしも愛美が施設出身だということを、あの家の人たちが悪く言ったら……?

 彼はきっと、自分のことをどれだけひどくこき下ろされても何ともないと思う。けれど、自分の大事な人のことをバカにされたらガマンならないんじゃないだろうか。

(まあ、その前にわたしがブチ切れるだろうけど)

 愛美はこれまで、自分の育ってきた境遇を恥じたことなんて一度もない。同情されるのもキライだけれど、バカにされるのはその何十倍もキライなのだ。

「――愛美さん、叔父さまは何とおっしゃってたの?」

 珠莉の声で、愛美はハッと我に返った。――そうだ。この部屋には珠莉もさやかもいるんだった!

「ああ、うん。わたしが行くなら、たまには実家に帰ってみるよ、って」

「……そう。他には?」

「他の親族とうまくやれるかどうか分からないから、居心地が悪くなったら出ていくかも、って。でも、わたしに何かあったら盾になってくれるらしいよ」

「なるほど。……まあ、叔父さまは元々そういうクールな人だものね。でも、叔父さまがそんなことをおっしゃるようになったなんて。愛美さんのおかげでお変わりになったのかしら」

「え……」

 自分が誰かを変えた。まさか、そんな影響力を自身が持っていたなんて! ――愛美は本当に驚いた。

「恋っていうのは、人をここまで強くするものなのね」

「ああ……、そういうことか」

 どうやら愛美の力ではなく、恋の魔力とかいうヤツの力らしい。

「――ところで、話変わるんだけど。珠莉ちゃんのお家でもクリスマスってパーティーとかするの?」

 さやかの家はアットホームで楽しくて、愛美も居心地がよかった。クリスマスパーティーも手作り感満載で、参加した子供たちもすごく楽しんでくれていた。

「ええ、もちろん。ウチは盛大に行いますわよ。社交界の面々、特に政財界の大物も多数ご招待してますし、ドレスコードもキチっとしてますの」