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それから一ヶ月。愛美たちの学校では体育祭や球技大会、文化祭などの大きな行事も終わり、二学期の中間テストを間近に控えていた。
そんなある日のこと――。
『――恐れ入ります。こちらは明見社文芸部の、〈イマジン〉編集部でございますが。相川愛美さんの携帯で間違いありませんでしょうか?』
休日の午後、さやかと珠莉と三人で、部屋でテスト勉強に励んでいた愛美のスマホに一本の電話がかかってきた。
「はい、相川ですけど。……ちょっとゴメン! 外すね」
愛美は電話に応対するために二人のルームメイトに断りを入れ、一旦自分の寝室に引っ込んだ。
「――あ、失礼しました。改めて、わたしが相川愛美です」
『この度は、〈イマジン〉の短編小説コンテストにご応募頂きましてありがとうございます。相川さんの選考結果をお伝えしたく、お電話を差し上げました』
「はい」
そういえば、そろそろ結果が出る頃だと愛美も思っていたのだ。
『厳正なる選考の結果ですね、相川さんの応募作が佳作に選ばれまして。〈イマジン〉の来月号に掲載されることが決まりました!』
「……えっ!? それホントですか?」
『はい、本当です。おめでとうございます! 相川さん、当誌から作家デビュー決定ですよ! これからも頑張って下さいね!』
「ホントなんですね!? わたしが……作家デビュー……。あの、ご連絡ありがとうございます! わたし、頑張ります! 失礼します」
興奮のあまり声が上ずって、心もち血圧も上がっているかもしれない。それでも何とか落ち着いて、愛美は通話を終えた。
「さやかちゃん、珠莉ちゃん! わたし――」
「聞こえてたよ、愛美。おめでとう!」
勉強スペースに戻ってきた彼女が口を開こうとすると、さやかがみなまで言わせずに喜びの言葉をかぶせて来た。
「愛美さん、デビュー決定おめでとう。やりましたわね」
「うんっ! 二人とも、ありがと!」
親友二人からの温かいお祝いの言葉に、愛美は胸がいっぱいになりながらお礼を言った。