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「――ねえ、珠莉ちゃん。純也さんのことで、ちょっと訊きたいことがあるんだけど」

 愛美は部屋に戻ると、意を決して珠莉に声をかけた。
 〝訊きたいこと〟とはもちろん、純也さんのこと。彼について訊ねるなら、彼の親戚である珠莉が一番の適任者だ。

「ええ、いいけれど。何ですの?」

「あのね、春に純也さんが寮に遊びに来た時のことなんだけど……」

 あの日からずっと、珠莉と純也さんの力関係が微妙に変わったと愛美は感じていたのだ。

「わたしがインフルエンザで入院してたこと、ホントは純也さんに話してないよね? あの時は話を合わせてたみたいだけど」

「……ええ、話していないわ。だから私もあの時、おかしいなと思ったの。でも、何か事情がおありなんだと思って、とっさに話を合わせたのよ」

「やっぱり……」

(あの時の引っかかりの原因はコレだったんだ……)

 愛美は合点がいった。あの時、彼女の様子がおかしかったのには、こういう事情があったらしい。

「それでね、私はピンときて、叔父さまを問いつめましたの。『愛美さんの保護者の〝おじさま〟って、純也叔父さまのことですわよね?』って。そしたら、叔父さまは渋々ですけれどお認めになりましたわ」

「そうだったんだ……」

 珠莉は、叔父が愛美の〝あしながおじさん〟だということを知っていたのか……。

「だから珠莉ちゃん、あれからわたしに協力的になったんだね。ありがと」

「……愛美さんも、もしかして気づいていらっしゃるんですの? おじさまの正体に」

「うん。でもね、わたしは気づいてないフリをすることにしたの。だから純也さんの方から打ち明けてくれるまで、わたしからは訊かない」

 彼は愛美を(あざむ)いていることを心苦しいと思っているだろうから。いつか良心の呵責(かしゃく)で、打ち明けてくれる時がくるだろう。――彼はそういう人だから。

「そうですの。……まぁ、それがいいかもしれませんわね。お二人のためには」