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 ――九月に入り、二学期が始まった。

「なんかあっという間だったねー、今年の夏休みは」

 二学期初日の終礼が終わり、さやかが教室を出る前に大きく伸びをした。

「さやかちゃん、インターハイお疲れさま。残念だったねぇ……、せっかく頑張ってたのに」

「うん……。まあ、しょうがないよ。上には上がいたってことだもん。また来年があるし、秋にも大会あるからさ」

「そうだね」

 ――さやかは陸上競技のインターハイで、無事に予選は突破したものの、決勝では思うように記録が伸びずに六人中五位の成績に終わったのだ。

「っていうかさ愛美。ヘコんでる時に、電話で延々ノロケ話聞かされたあたしの身にもなってよねー」

「……ゴメン。嬉しくてつい」

 愛美はさやかにペロッと舌を出して見せる。

「まぁねー、初めて彼氏ができて、しかも初キスまでして。その喜びを誰かに聞いてほしいってのは分からなくもないんだけどさ」

「うん、まぁ。――あ、あとね。奨学金受けられることになったんだ、わたし」

「へぇ、そうなんだ? よかったじゃん、愛美!」

「うん! もう純也さんとおじさまには報告してあるんだ」

 ――愛美は長野を離れる前に、純也さん宛てにこんなメッセージを送っていた。

『純也さん、嬉しい報告☆
学校の事務局の人から連絡があって、わたし、奨学金を受けられることになったの!(*≧∀≦*)
その分、学校では優秀な成績をキープしなきゃいけないけど、わたしなら大丈夫!
二学期からも頑張ります♪ もちろん、小説家になる夢もね。』

 〝あしながおじさん〟にも、同じような文面の手紙を書き送った。
 彼からはまだ返事が来ていないけれど、純也さんからはすぐに返信が来た。

『よかったね、愛美ちゃん。おめでとう!
僕も嬉しい☆ 田中さんもきっと喜んでくれてるよ。
ただ、ちょっと淋しいとは思ってるかもしれないけどね(^_^;)』