「あ……、はい! お願いします」

 電話をかけてきたのは、学校の事務局で奨学金を担当している男性だった。声の感じからして、四十代から五十代と思われる。

『えー、審査を行いました結果、相川さんに奨学金を給付することが決定しました』

「えっ、本当ですか!? ありがとうございます!」

 愛美は驚き、ホッとし、無事に審査を通してくれたことに感謝の言葉を述べた。

『はい。つきましては、相川さんが今後の学習においても、優秀な成績を修められることを私どもお祈りしております。しっかり頑張って下さい。では、失礼いたします』

「はい! 頑張ります。ご連絡ありがとうございました」

 愛美は電話を切った後、ホッとして呟く。

「よかった……」

 この一ヶ月半、心穏やかではいられなかった。純也さんと一緒にいる時でさえ、いつ連絡が来るかとソワソワしていたものである。

 もちろん、奨学金を受けられることが決まったからといって、それがゴールではない。この先、ずっと優秀な成績を取り続ける必要がある。――けれど、元々成績優秀な愛美にはそれほど厳しいことではない。

「――あ、おじさまに報告しなきゃ! それとも、純也さんに連絡するのが先かな」

 愛美は考えた。もしも純也さんと〝あしながおじさん〟が別人だったら、両方に知らせる必要があるけれど。

(もし同一人物だったら、わざわざ手紙で知らせる必要はなくなるってことだよね……)

 愛美も本当はそうしたい。でも、それでは彼の方が不審がるかもしれない。
 だって彼は、まさか愛美が自分の秘密に気づいているとは思っていないだろうから。それに、気づいていないフリをすると決めたのに、それでは意味がないし。

「とりあえず、先に純也さんに知らせて、その反応を見てからおじさまに手紙を書こう」

 悩んだ末、最終的に愛美が出した結論は、これだった。