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 ――それから五日後、純也さんの休暇が終わり、彼は東京へ帰ることになった。

「愛美ちゃん、この夏は一緒に過ごせて楽しかったよ。残念だけど、僕は帰らないと」

 純也さんは玄関先まで見送りに出た愛美に、名残惜しそうにそう言った。

「うん……。またデートしてくれるよね?」

「もちろんだよ。また連絡するからね」

「うん! わたしも、また連絡する。お仕事頑張ってね」

 彼はこれから、また東京で忙しい日々を送ることになるのだ。恋人である自分からの連絡が、少しでも彼の癒しになってくれたら……と愛美は思う。

「うん、ありがとう。愛美ちゃんも頑張って夢を叶えなよ。僕も応援してる」

(そりゃそうだよね。だって、この人はそのためにわたしを……)

 愛美の彼に対する疑念は、ほぼ確信に変わりつつあった。
 考えてみたら、彼の言動はところどころ怪しかった。愛美はカンが鋭いので、それで「おかしい」と思わないわけがないのだ。

(まだ、本人に確かめなきゃいけないことはあるんだけど……)

「ありがと。……ねえ、純也さん」

 気づいていないフリをしようと決めたものの、ついつい確かめてみたい衝動に駆られた愛美は思わず彼に呼びかけていた。

「ん? どうしたの、愛美ちゃん?」

(……ダメダメ! ここで確かめたら、わたしのせっかくの決意がムダになっちゃう!)

「あ……、ううん! 何でもない」

 愛美はオーバーに首を振って、どうにかごまかした。

 ――こうして純也さんは帰っていき、愛美の夏休みも残りわずかとなった。
 もう宿題は全部終わっているし、あとは横浜の寮に帰る準備をするだけだ。

 ――そんなある昼下がり。愛美のスマホに一本の電話がかかってきた。

「純也さん? ……じゃない! 学校の事務局からだ」

 そういえば、奨学金の審査の結果は夏休み中に知らせてくれることになっていた。

「――はい、相川です」

『二年三組の相川愛美さんですね。こちらは茗桜女子大学付属高校の事務局です。申請してもらっていた奨学金の審査結果をお知らせします』