彼と一緒にいるとホッとして、彼になら何でも話せる気がします。
 これからはきっと、おじさまに手紙でご相談してたことを、純也さんに聞いてもらうことが増えるかもしれません。
 でもそうなったら、わたしとおじさまとの関係は、これまで築き上げてきた信頼関係は崩れてしまうのかな……。それはわたしも不本意なので、これからもちゃんとおじさまに手紙は送り続けます。
 この封筒の厚み、おじさまはビックリなさったんじゃないでしょうか? 純也さんが来て下さってから、手紙を出せないままずっと書き溜めてたんです。もう一週間くらいかな? だから、だいぶ長い手紙になっちゃいましたね。
 それじゃ、そろそろおしまいにします。次はきっと、奨学金の審査の結果についてのお知らせになると思います。

    八月十三日    愛美    』

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「――ホント、すごい厚み……」

 折り畳んだ便箋を封筒に収めた後、愛美はフフッと笑った。

 純也さんと渓流釣りに行ったこと、近くの山に登ったこと、キャッチボールをしたこと。雨の日に二人で読んでいた本のこと、純也さんもパン作りを手伝ってくれたこと――。愛美はすべて、日記のように手紙に書いていた。

 でも出すタイミングが延ばし延ばしになり、気がつけばこれだけの量になってしまったのだ。

 スタンドライトの明かりだけがついている机の上にはもう一通、A4サイズの茶封筒が置いてある。この夏に愛美が執筆し、四作ある中から純也さんに選んでもらった文芸コンテストへの応募作品だ。

(明日これを郵送したら、あとは運を天に任せるだけ……。お願い、入選させて! 佳作でもいいから!

 願かけするように、愛美は封筒の表面をひと撫でした。

「――さてと。ボチボチ寝られるかな……」

 手紙を書いているうちに、少しずつ眠気が戻ってきた。気持ちが落ち着いてきたからかもしれない。

 愛美はスタンドの明かりを消すと、再びベッドに潜り込んだのだった。