「はい、手紙では何度も。――何かマズかったですか?」

「…………いや、別に」

(純也さん、今の溜めはナニ?)

 愛美はちょっと首を傾げた。もしかして純也さんは、愛美と付き合うことになったので、彼女の保護者にあたる〝あしながおじさん〟と顔を合わせづらくなるんじゃないかと心配している? それとも……。

(やっぱり彼が〝あしながおじさん〟本人で、この先わたしとの関係がこじれることを心配してる?)

 そう思うのは、愛美の考えすぎだろうか?

「実はこの話、純也さんと両想いになれるまではするのやめとこうって思ってたんです。どうしてもあなたのことに触れなきゃいけなくなるし、告白する前に話しちゃったらわたしの気持ち、あなたにバレちゃうから」

「うん、なるほど。だから話すのが今日になったわけだね? っていうか僕は、君の気持ちにはだいぶ前から気づいてたけど」

「え……。もしかして、珠莉ちゃんから聞いたんですか? それともわたし、思いっきり態度に出てました?」

 初めて恋をして一年やそこらでは、恋心を顔に出さないというスキルは簡単には身に着かないんだろうか?

「ふふふ。まぁ、それはノーコメントってことで」

「え~……? なんかズル~い!」

 純也さんもうまく逃げたものである。これでは答えが「イエス」なのか「ノー」なのか、愛美には判断がつかない。

「えっと、話戻しますけど。――おじさまって、わたしにとっては父親代わりみたいな存在なんですよね。だから、わたしに好きな人ができたことも、あんまり面白くないんじゃないかなって思ってたんです」

「そりゃあ、本当の娘だったらね。たとえば、珠莉に好きな男ができたとしたら、兄は――珠莉の父親は面白くないと思うよ。でも、田中さんはまだ若いし、君の〝父親代わり〟であって〝父親〟ではないから」

「はあ……、なるほど。そうですね」

 純也さんの話には妙な説得力があって、愛美は納得した。