「わたし、卒業後はこのまま大学に進もうかどうしようか迷ってたんです。で、担任の先生から奨学金の申請を勧められて。申請したんですけど」

「うん」

「奨学金が受けられるようになったら、これから先の学費はかからないって。もちろん、大学に進んでからも。……ただ、おじさまが許してくれるかっていう心配はあったんだけど」

「うん」

 純也さんは途中で口を挟むことなく、相槌を打ちながら愛美の話に真剣に耳を傾けてくれている。

「でもね、おじさまは許してくれたんです。わたしが奨学金を受けることも、大学に進むことも。学費はもう出してもらわなくてよくなるけど、お小遣いだけはこれからも受け取るつもりでいるって、秘書さんには伝えました」

「うん。……えっ? それが僕に相談したいこと?」

 ここまでの話だと、むしろ喜ばしいことなんじゃないかと純也さんは思ったようだけれど。

「あ、ううん。そうじゃなくて……。わたしは逆に、コレでいいのかなぁって思っちゃって。せっかくのおじさまの厚意を途中でムダにして、おじさまのメンツっていうか……立場を潰しちゃったりしないかな、って」

「ああ、なるほどね。君は田中さんに対して遠慮があるわけだ。『せっかく援助を申し出てくれた彼に申し訳ない』って」

「はい……。こんなの、わたしのワガママじゃないかな……と思って」

 愛美は純也さんの解釈に頷く。
 別に、純也さんにどうこうしてほしいわけじゃないけれど。聞いてもらうだけで気持ちが軽くなるということもあるわけで。

「僕の知る限りじゃ、彼はそんなことで気を悪くするような人物じゃないけど。むしろ、喜んで申請用紙も書いてくれたんじゃないかな」

「えっ? ……はい。秘書さんもそう言ってました。あと、わたしが恋をしてることも、おじさまは嬉しく思ってるって」

「愛美ちゃん……、もしかして僕のことも田中さんに?」