「――あ、それから。もう一つ小包みが届いてますよ」

 彼はそう言って、小さめの箱を愛美に手渡した。
 箱の大きさはノートくらいで、厚みは四~五センチくらいだろうか。

「えっ、小包み? ありがとうございます」

 愛美は小首を傾げながらも、お礼を言って受け取った。

「誰からだろう? ……ウソ」

 貼られている伝票を確かめて、目を丸くする。差出人の名前は、〝久留島栄吉〟。――あの〝田中太郎〟氏の秘書の名前だ。

(一体、何を送ってくれたんだろう……?)

「こわれもの注意」のステッカーが貼られているけれど、品物が何なのかまでは皆目(かいもく)見当がつかない。

「まあいいや。部屋に着いてからゆっくり開けようっと」

 箱をスーツケースに入れ。部屋に向かおうとすると――。

「ちょっと! 私が相部屋になってるってどういうことですの!? 父から『一人部屋にしてほしい』と連絡があったはずでしょう!?」

 一人の女の子の(かな)()り声が聞こえてきて、愛美は思わず足を止めた。

 先ほどまで自分がいた方を見れば、声の主はスラリと背の高い女の子。彼女はあの男性職員に何やら食ってかかっている様子。

(へん)(とう)(いん)珠莉(じゅり)さん。申し訳ありませんが、一人部屋はもう他の新入生が入ることになっていて。今更変更はできません」

「ええっ!? ウソでしょう!?」

(一人部屋……、って私が使うことになった部屋だ……)