「――愛美ちゃん! 佳織ちゃんと一緒にパン作り手伝ってー!」
「はーい! 多恵さん、今行きまーす!」
夏休みが始まって十日。
この日の午後も、愛美はキッチンで多恵さんのパン作りのお手伝い。最初はド素人丸出しだった生地のこね方も、もう十日目にもなるとだいぶ板についてきた。今では愛美も、この時間が楽しみになっている。
「……あ、そうだ。スマホは持って行っといたほうがいいかな」
純也さんから、そろそろ連絡がくるかもしれない。愛美はスマホを自前のチェックのエプロンのポケットに入れて、キッチンへ下りていった。
「――わぁ! 愛美ちゃん、生地こねるのうまくなったね。あたしなんか、そうなるまでにあと一ヶ月はかかりそうだよ」
佳織さんが粉まみれになってパン生地を相手に悪戦苦闘しながら、愛美の手つきを惚れ惚れと眺めて言った。
「そうですか? まあ、元々お料理も好きだったし、楽しいと上達もしますよ」
手作りパンの経験はないし、もちろんパン屋さんで働いたこともないけれど。この後美味しいパンが食べられると思えば、こんなの苦労でも何でもない。
「――さ、こね方はこれくらいでいいでしょう。冷蔵庫で三十分くらい発酵させましょうね。二人とも、手を洗って」
「「はい」」
愛美が先に手を洗わせてもらい、タオルで手を拭いていると……。
♪ ♪ ♪ ……
愛美のエプロンのポケットで、スマホが着信を告げる。五秒以上鳴っているので、電話の着信らしい。
「――あ、純也さんからです。もしもし? 愛美です」
『愛美ちゃん? 純也だけど、今大丈夫かな?』
「はい、大丈夫です。今、キッチンで多恵さんと佳織さんと三人で、パン作りしてるんです」
『パン作り?』
純也さんがオウム返しにした。どうして多恵さんが急にそんな趣味にはしったのか、多分頭の中にクエスチョンマークを飛ばしているんだろう。
「はーい! 多恵さん、今行きまーす!」
夏休みが始まって十日。
この日の午後も、愛美はキッチンで多恵さんのパン作りのお手伝い。最初はド素人丸出しだった生地のこね方も、もう十日目にもなるとだいぶ板についてきた。今では愛美も、この時間が楽しみになっている。
「……あ、そうだ。スマホは持って行っといたほうがいいかな」
純也さんから、そろそろ連絡がくるかもしれない。愛美はスマホを自前のチェックのエプロンのポケットに入れて、キッチンへ下りていった。
「――わぁ! 愛美ちゃん、生地こねるのうまくなったね。あたしなんか、そうなるまでにあと一ヶ月はかかりそうだよ」
佳織さんが粉まみれになってパン生地を相手に悪戦苦闘しながら、愛美の手つきを惚れ惚れと眺めて言った。
「そうですか? まあ、元々お料理も好きだったし、楽しいと上達もしますよ」
手作りパンの経験はないし、もちろんパン屋さんで働いたこともないけれど。この後美味しいパンが食べられると思えば、こんなの苦労でも何でもない。
「――さ、こね方はこれくらいでいいでしょう。冷蔵庫で三十分くらい発酵させましょうね。二人とも、手を洗って」
「「はい」」
愛美が先に手を洗わせてもらい、タオルで手を拭いていると……。
♪ ♪ ♪ ……
愛美のエプロンのポケットで、スマホが着信を告げる。五秒以上鳴っているので、電話の着信らしい。
「――あ、純也さんからです。もしもし? 愛美です」
『愛美ちゃん? 純也だけど、今大丈夫かな?』
「はい、大丈夫です。今、キッチンで多恵さんと佳織さんと三人で、パン作りしてるんです」
『パン作り?』
純也さんがオウム返しにした。どうして多恵さんが急にそんな趣味にはしったのか、多分頭の中にクエスチョンマークを飛ばしているんだろう。



