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 ――JR長野駅の前には、一年前と同じように千藤農園の主人(名前は善三(ぜんぞう)さんという)が車で迎えに来てくれていた。もちろん、助手席には多恵さんも乗っている。

「こんにちは! 今年もお世話になります」

「愛美ちゃん、こんにちは。待ってたわよ」

「よく来てくれたねぇ。もう荷物は届いてるから、天野君に部屋まで運んでもらってあるよ。――さ、乗りなさい」

「ありがとうございます。じゃあ、おジャマしまーす」

 礼儀正しく挨拶をした愛美を、善三さんはニコニコしながら白いライトバンの後部座席に乗せてくれた。

「――あ、多恵さん。いいお知らせです。純也さん、今年の夏はこちらに来られるそうですよ」

「あら、坊っちゃんが? でも、ウチには連絡なかったわよ。ねえ、お父さん?」

 驚いた多恵さんは、首を傾げて夫である善三さんを見た。

「ああ、電話はなかったねぇ。愛美ちゃんはどうして知ってるんだい?」

「実はわたし、五月から純也さんと個人的に連絡取り合えるようになったんです。で、わたしが先月かな、お電話した時にそうおっしゃってたんで」

「そうなの? 知らなかったわ。でも、あの坊っちゃんが女の子と個人的に連絡を取るようになるなんて……。愛美ちゃんは、よっぽど坊っちゃんに気に入られてるのね。――で、坊っちゃんのご到着はいつごろになるの?」

「あ……、それはまだ分かんないです。お忙しいのか、その後連絡がなくて。さっき、わたしからもメッセージ送ってみたんで、そのうち折り返しがあると思います」

 純也さんが、愛美からの連絡を無視するはずがない。連絡がないのは、本当に多忙だったからだろう。
 愛美はスポーツバッグのポケットからスマホを取り出した。メッセージアプリを開いてみると、新幹線の車内から送ったメッセージはちゃんと既読になっている。

(純也さん、ちゃんと見てくれたんだ……。よかった)