拝啓、あしながおじさん。

 さやかちゃんはすごくガッカリしてましたけど、わたしは部活を一生懸命頑張ってるさやかちゃんが大好きです。だから、遠く離れた長野から応援しようって決めました。
 最後になりましたけど、久留島さんはおじさまのことをすごく慕ってらっしゃるみたいですね。
 彼はお電話で、おじさまのことを「ボス」ってお呼びになってました。多分ですけど、おじさまよりだいぶ年上のはずなのに。
お二人の関係が良好で、お互いに信頼しあってるんだなって、わたしにもよく分かりました。
 ものすごく長い手紙になっちゃいましたね。すみません。
 今年の夏休みも思う存分楽しんで、そして執筆も頑張って、ステキな思い出をたくさん作ってこようと思います。ではまた。

    七月十日   愛美

P.S. 奨学金の審査の結果が出たら、またおじさまにお知らせします。夏休みの間に、事務局からわたしの携帯に直接連絡が来るそうなので。             』

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 ――そして、いよいよ七月二十日。今日から夏休みが始まる。

「じゃあさやかちゃん、わたしたちもう行くから。部活頑張ってね☆」

 愛美は新横浜駅まで、珠莉と一緒に行くことになっている。

「うん、頑張るよ。どこまで進めるか分かんないけどね。……あ、愛美の恋の進展具合も教えてよ」

「……もう! さやかちゃんシュミ悪いよぉ。――分かった。ちゃんと教えるよ」

 女の子同士の友情なんて、こんなものじゃないだろうか。からかわれても、やっぱり親友には恋バナを聞いてほしいものなのだ。

「ところで愛美さん。荷物はそれだけですの?」

 珠莉は愛美の荷物がスーツケースとスポーツバッグ、それぞれ一つずつしかないことに首を傾げた。
 一年前にはこの他に、段ボール箱三つ分の荷物がドッサリあったというのに。

「うん。大きな荷物は先に送っといたの。去年より一箱少ないけどね」

 千藤農園にお世話になるのも、今年で二度目。先に荷物が届けば、向こうもあとは愛美本人の到着を待てばいいだけ、ということだ。