「まあ、そんなにおびえないで。よほどヒドい作品じゃなければ、叔父さまだってそんなに厳しいことはおっしゃらないと思いますわ」

「……そう? 分かった」

 自分のメンタルの弱さは十分自覚しているので、愛美はあまり自信がないながらも頷く。

(コレで全部「ボツ!」とか言われたら、わたし多分立ち直れない……。ううん、大丈夫!)

 それでも、どれか一作くらいは純也さんのお眼鏡にかなう作品があると思うので、全滅の可能性を愛美は打ち消した。

「――あ、そういえばわたし、今月に入ってからおじさまに手紙出してないや」

 前に手紙を出したのは、上村先生から奨学金の申請を勧められた時。あの時はまだ六月だった。

「今日は秘書さんからの電話もあったことだし、夏休みの予定も多分まだ伝えてないから。そろそろ書かないと」

 先月の手紙では、奨学金のことを伝えるのに精一杯だった。あの時はまだ、純也さんに電話する前だったし……。

「そうだよね。ちゃんと知らせて、おじさまを安心させてあげないとね。――珠莉、あたしたちはちょっと外そう。コンビニ行くから付き合って。あたし、洗顔フォームが切れてたの思い出したんだ」

 この寮の中には、お菓子などの食品・ドリンク類からちょっとした文房具や日用品、雑誌まで揃うコンビニもあるのだ。

「ええ? ……まあいいわ。私は特に買うものはないけど、時間潰しにはなるものね。――じゃあ愛美さん、ちょっと行ってきますわ」

「うん、行ってらっしゃい。二人とも、わざわざ気を遣わせちゃってゴメンね」

 ――二人が出ていくと、愛美は机に向かい、レターパッドを開いた。

****

『拝啓、あしながおじさん。

 今日のお昼、おじさまの秘書の久留島さんからお電話を頂きました。
 久留島さんは、おじさまがわたしの奨学金のことも、大学に進むことも反対されてないとおっしゃってました。わたし、何だか信じられなくて……。