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――その日部室で、四作ほどの大まかなプロットを作り終えた愛美は、ちょっとした達成感を得て寮の部屋に帰った。
「ただいまー」
「お帰りなさい、愛美さん」
「お帰りー。お疲れさん」
部屋には珠莉と、部活を終えたさやかもいた。部屋のバスルームでシャワーを済ませた後なのか、さやかの髪は少し濡れている。
「さやかちゃんも、部活お疲れさま。大丈夫? バテてない?」
「ああ、平気平気☆ めっちゃ汗かいたから、先にシャワー使わせてもらったし。こうして水分と塩分補給してるから」
さすがはアスリートだ。彼女が飲んでいるのは、水分と塩分が両方摂れるスポーツドリンクだった。
「愛美も飲む?」
「うん、ありがと。もらおっかな。グラス持ってくるよ」
愛美がキッチンから取ってきたグラスに、さやかが五〇〇mlのペットボトルからスポーツドリンクを注いでくれた。
「愛美さん、それを飲んだらお着替えなさいよ」
「うん、そうする」
やっぱり、部屋に帰ってきてから制服のままでいるのは落ち着かない。
――着替え終えた愛美は、再び共有スペースの椅子に座り直した。
「部活はどうでしたの? 何かいいアイデアが浮かびまして?」
「えっとねぇ、とりあえず四作くらいのプロットが浮かんだよ。一応、全部小説として書いてみて、その中から応募する作品を選ぶつもり」
雑誌の公募となると、どのジャンルが受賞しやすいかどうか、傾向を見極める必要があるのだ。
「そっか。じゃあ、その前に誰かに一通り読んでもらって、その人の意見とか感想も参考にした方がいいよね」
「でしたら、純也叔父さまに読んで頂いたらどうかしら? 叔父さまの批評は的確ですから。ただし、少々辛口ですけど」
「えぇ~~? それはちょっとコワいなぁ……」
愛美はちょっと困った。自分が一生懸命書いた小説を、大好きな人からけちょんけちょんに言われるとヘコむ。



