(……あ。わたしが純也さんに言われたこととおんなじだ)

 愛美は思った。セレブの人たちって、一体どんな異性と知り合うんだろう? と。
 みんながみんなお金目当てとか、打算で近づいてくるような人ばかりだったら、恋なんてできるわけがない。
 したところで、本気で自分を好きになってくれない人を好きになったって虚しいだけだし……。

「お兄ちゃん……ねぇ。言っちゃ悪いけど、あんまりオススメできないよ? 可愛い女の子には目がないし、愛美だってターゲットにされたもん。秒でフラれたけど」

 兄の性格を知り尽くしている妹としては、さやかも珠莉と兄がくっつくことをあまりよくは思っていないらしい。
 それは兄のためではなく、珠莉があの兄のせいで泣くところを見たくないという、友情に基づいての忠告だったのだけれど。

「あら! でも、少なくともあの人には打算っていうものはないでしょう? それに、好きになった女性のことは絶対に大事にする方なんでしょう? でしたら何の問題もありませんわ」

「う……、まぁ。お兄ちゃんはそういう人だけど……」

 〝恋は盲目(もうもく)〟というのか、珠莉はすっかり治樹さんが「女性を大事にできるステキな男性」だと思い込んでいるようで。

「さやかちゃん。こうなったらもう、珠莉ちゃんの背中押したげるしかないんじゃない? 親友として」

「…………だね。しょうがないかぁ」

 さやかは渋々、愛美の言葉に頷いた。

「――ところでさ、愛美。ここでのんびり喋ってていいの? もうゴハンは食べ終わってるみたいだけど、午後から部活じゃなかったっけ?」

「えっ? ……わあ! もうすぐ一時!? ごちそうさまでした! わたし、もう行くねっ!」

 愛美はイの一番に部室へ行って、文芸コンテストに応募する短編小説の構想を何作分か練っておくつもりだったのだ。

「さやかちゃんは、まだ行かなくていいの? 部活出るんじゃ……」