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愛美が目指す私立茗倫女子大付属高校は山手の方にあるので、新横浜からは地下鉄に乗り換えなければならないのだけれど。
「……あれ? 乗り換えの駅はどこ~?」
早くも複雑怪奇な地下街で迷子になってしまった。
スマホがあれば行き方を検索することもできるけれど、残念ながら愛美はスマホを持っていないし持ったこともない。
目の前にはパン屋さんがあり、美味しそうな匂いがしてくる。
「お腹すいたなあ……」
お昼を過ぎているし、昼食代わりにパンを買って食べるのもいいかもしれない。
愛美は焼きたてのメロンパンを買うついでに、店員さんに山手に行く路線の駅を訊ねた。店員のお姉さんは親切な人で、愛美にキチンと教えてくれた。
券売機で切符を買い、改札を抜け、ホームでメロンパンをかじりながら電車を待つ。
施設にいた頃には、こんな経験をしたことがなかった。自分で切符を買うのも、人に道を訊ねるのも初めての経験で、愛美はドキドキしっぱなしだ。
「次は、どんなドキドキが待ってるんだろう?」
自動販売機で買ったカフェラテを飲みながら、愛美はワクワクする気持ちを言葉にして言った。