「お金……、返すつもりなんだ?」

「うん。おじさまは望んでないと思うけど、わたしはできたらそうしたい」

 愛美の意思は固い。元々自立心が強い彼女にとって、経済面で〝あしながおじさん〟に依存している今の状況では「自立している」ということにはならないのだ。
 もし彼がその返済分を受け取らなくても、愛美は返そうとすることだけで気持ちの上では自立できると思う。

「それにね、奨学金は大学に上がってからも受け続けてられるんだって。大学の費用まで、おじさまに出してもらうつもりはないから」

「それじゃあ、あなたも私たちと一緒に大学に進むつもりなのね?」

「うん。そのことも含めて、おじさまには手紙出してきたけど。さすがにこんな大事なこと、わたし一人じゃ決めらんないから」

 愛美はまだ未成年だから、自分の意思だけでは決められないこともまだまだたくさんある。そういう点では、彼女は〝カゴの中の鳥〟と同じなのかもしれない。

「おじさまが賛成して下さるかどうかは分かんないけどね。一応おじさまが保護者だから、筋は通さないと」

「律儀だねぇ、アンタ。何も進学のことまでいちいちお伺い立てなくても、自分で決めたらいいんじゃないの?」

「それじゃダメだと思ったの。誰か、大人の意見が聞きたくて。……でも、誰に相談していいか分かんないから」

「でしたら、純也叔父さまに相談なさったらどうかしら?」

「えっ、純也さんに!? どうして?」

 何の脈絡もなく、この話の流れで出てくるはずのない人の名前が珠莉の口から飛び出したので、愛美は面食らった。

「ええと……、そうそう! 叔父さまは愛美さんにとって、いちばん身近な大人でしょう? きっと喜んで相談に乗って下さいますわ。愛美さんの役に立てるなら、って」

「そ、そう……かな」

 珠莉は何だか、取って付けたような理由を言ったような気がするけれど……。他に相談相手がいないので、今は彼女の提案に乗っかるしかない。