「……いやいや! まだそうと決まったワケじゃないよね」

 愛美は(はや)る気持ちを抑えようと、そう自分に言い聞かせる。まだ本人の口から聞く(もしくは、メッセージで伝えてもらう)までは、百パーセント決まりではないのだ。

「はぁぁぁぁ~~~~……」

 恋にため息はつきものだと、小説で読んだことがある。まさか、自分自身がこんな風になるなんて、一年前には想像もつかなかったのに。

(早く純也さんのホントの気持ちを聞いて、安心したいなぁ)

 それまでは、愛美に心穏やかな日常は訪れないだろう。彼の言動一つ一つに一喜(いっき)一憂(いちゆう)させられて、ハラハラドキドキしっぱなしに違いない。

「……とりあえず、落ち着こう」

 こういう時は、〝あしながおじさん〟に手紙を書くのが一番だ。今日一日の体験を聞いてほしいというのもあるし――。

 愛美は勉強机に向かうと、今日原宿の雑貨屋さんで買ってきたばかりの新品のレターセットを開けた。

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『拝啓、あしながおじさん。

 お元気ですか? わたしは今日も元気いっぱいです。
 先月のお手紙でもお知らせした通り、今日は純也さんからのお招きでさやかちゃん・珠莉ちゃんと一緒に東京の原宿に行ってきました。
 朝からいいお天気で、絶好のお出かけ日和でした。
 東京って、というか原宿って、楽しい街ですね! 色んなお店や場所に行きました。ミュージカルを鑑賞した劇場、オシャレなカフェ、可愛い雑貨屋さん、古着屋さん、クレープ屋さんに高級ブランドのショップ……。
 どこも面白くて、何から書いていいか分からないくらいです。
 純也さんとは、午後一番でJR原宿駅の前で待ち合わせしてました。いつもはスーツ姿の純也さんも、今日はちょっとカジュアルな私服姿。でも背が高いので、モデルさんみたいでカッコよかったです!
 わたしたち四人は、まずは駅前のオシャレなカフェでランチを頂きました。