わざわざ自分で荷物を持たなくても、寮までの配送を手配すればいいのでは、と純也さんが指摘する。
 個人の小さなショップならともかく、セレクトショップなら配送サービスもあるはずだと。

 ――ところが。

「配送なんて冗談じゃありませんわ。手数料がもったいないじゃないですか」

「珠莉ちゃん……」

 彼女らしからぬ発言に、愛美も二の句が継げない。

(珠莉ちゃんお金持ちなんだから、それくらいケチらなくてもいいのに)

 と愛美は思ったけれど、お金持ちはケチと紙一重でもあるのだ。……もちろん、ほんの一部の人だけれど。

「…………あっそ」

 これ以上ツッコんでもムダだと悟ったらしい純也さんは、とうとう白旗を揚げた。

「――ねえ、珠莉ちゃん、さやかちゃん。ちょっと」

 愛美は少し離れた場所に、親友二人を手招きした。この話は、純也さんに聞かれると困る。

「何ですの?」

「うん?」

「あのね……。さっき、わたしと純也さんを二人っきりにしてくれたのって、もしかしてわたしに気を利かせてくれたの?」

 さやかは電話でそれっぽいことを言っていたけれど、珠莉も同じだったんだろうか?

「だってさやかちゃん、『ブランドものには興味ない』って言ってたよね?」

「うん、そうだよ。でなきゃ、自分が興味ないショップに付き合ってまで、別行動取らないよ」

「ええ。……まあ、純也叔父さまのためでもあったんだけど」

「えっ?」

 〝純也さんのため〟ってどういうことだろう? ――愛美は目を丸くした。

「叔父さまに頼まれていたの。『ほんのちょっとでいいから、愛美さんと二人きりで話せる時間がほしい』って」

「え……。純也さんが? そうだったんだ」

 ……知らなかった。純也さんがそのために、「苦手だ」と言っていた珠莉(めい)に頼みごとをしていたなんて。
 そして、その頼みを聞き入れた珠莉にもビックリだ。