「……うん」

 愛美は恋愛初心者だから、告白の仕方なんて分からない(小説では読んでいるけれど、現実の恋となると話は別なのである)。だから、純也さんと少しでも近づけただけで、今日のところは大満足なのだ。

『じゃあ、もうじきそっちに合流できるから。また後でね』

「うん。待ってるね」

 ――電話が切れると、愛美は純也さんのいるベンチに戻った。

「ゴメンなさい。電話、長くなっちゃって」

「さやかちゃん、何だって? なんか、僕に聞かせたくない話してたみたいだけど」

 ちょっとスネたような言い方だけれど、純也さんはむしろ面白がっているようだ。女子トークに男が入ってはいけないと、ちゃんと分かっているようである。

「ああー……。えっと、さやかちゃんと珠莉ちゃんも今、表参道沿いにいるらしくて。もうすぐ合流できるって言ってました」

「それだけ?」

「いえ……。でも、あとは女子同士の話なんで。あんまりツッコまれたくないです。そこは察して下さい」

 純也さんだって、一応は大人の男性なのだ。そこはうまく空気を読んで、訊かないようにしてほしい。

「…………うん、分かった」

 ちょっと納得はいかないようだけれど、純也さんは渋々頷いてくれた。

「――お~い、愛美! お待たせ~☆」

 数分後、さやかが大きな紙袋を抱えた珠莉を引き連れて、愛美たちのいるところにやって来た。

「さやかちゃん、珠莉ちゃん! ――あれ? 珠莉ちゃん、また荷物増えてない?」

「珠莉……。お前、また買ったのか」

 純也さんも、姪の荷物を見てすっかり呆れている。

「ええ。大好きなブランドの新作バッグとか靴とか、欲しいものがたくさんあったんですもの。でも、さやかさんを荷物持ちにするようなことはしませんでしたわよ?」

「いや、そこは自慢するところじゃないだろ。せめて配送頼むとかって知恵はなかったのかよ?」