(そのおかげで、こうして純也さんとの距離をちょっとだけ縮めることもできたワケだし。二人にはホント感謝だなぁ)

 愛美が親友二人の大事さを、一人噛みしめていると――。

 ♪ ♪ ♪ …… 愛美のスマホが着信音を奏でた。

「――あ、電話? さやかちゃんだ。出ていいですか?」

 人前で電話に出るのは失礼にあたる。いくら一緒にいるのが純也さんでも。――愛美は彼にお伺いを立てた。

「うん、どうぞ」

「はい。――もしもし、さやかちゃん?」

『愛美、今どこにいんの?』

「今? えーっと……、メトロの表参道駅の近く。純也さんと本屋さんに行って、ちょっとベンチでお話してたの」

 愛美は純也さんに申し訳なさそうにペコリと頭を下げると、少し離れた場所へ移動する。この後、彼に聞かれたら困る話も出てくるかもしれないと思ったからである。

『そっか。あたしたちもやっと買いもの終わったとこでさぁ、ちょうど表参道沿いにいるんだ。――で、どうよ? 二人っきりになって。何か進展あった?』

「えっ? 何か……って」

 明らかに〝何か〟があって動揺を隠しきれない愛美は、「やっぱり純也さんと離れてよかった」と思った。

「……えっと、純也さんに『可愛い』、『出会えてよかった』って冗談抜きで言われた。あと、連絡先も交換してもらえたよ」

『えっ、それマジ!? それってほとんど告られたようなモンじゃん!』

「え……、そうなの?」

『そうだよー。アンタ気づかなかったの? もったいないなー。じゃあ、アンタから告白は?』

「…………してない」

 そう答えると、電話口でさやかにため息をつかれた。それでやっと気づく。さやかたちが愛美を純也さんと二人きりにしてくれたのは、愛美が告白しやすいようなシチュエーションをお膳立てしてくれたんだと。

『なぁんだー。ホントもったいない。せっかく告るチャンスだったのに。……でもまあ、ほんのちょっとでも距離が縮まったんならよかったかもね』