純也さんのスマホに自分の連絡先をパパパッと打ち込んでいく愛美の手つきに、彼は感心している。

「だって、もう二年目ですよ? 一年前のわたしとは違って、一年も経てば色々と使いこなせるようになってますから」

 この一年で、愛美はスマホの色々なアプリや機能を使いこなせるようになったのだ。動画を観たり、音楽を聴いたり、写真を撮ったり、SNSのアプリでさやかや珠莉と連絡を取り合ったり。スマホでできることは、電話やメールだけじゃないんだと実感できて、今ではすっかり楽しんでいる。

「いや……、でもスゴいよ。やっぱり若いなぁ」

「そんなことないです。純也さんだってまだまだ若いですよ。――はい、登録完了、と」

 愛美はデニム調のスマホカバーを閉じ、純也さんに返した。愛美のスマホには、先に彼が連絡先を登録してある。

「ありがとう。――おっ? さっそく『友だち登録』の通知が来た」

「あ、わたしにも。……フフッ、なんか嬉しいな」

 思わず笑みがこぼれる。
 純也さんは友達の叔父さんで、十三歳も年上で。一年前には近づくことすらできなかった人。でも今こうして、二人で並んでベンチに座って話をして、SNSの上でも繋がりができた。
 愛美の恋は、少しずつだけれど確実に前に進んでいる。

「これで珠莉に気がねすることなく、いつでも連絡できるね」

「はい!」 

 なんだかんだで、純也さんも嬉しそうだ。

(もしかして珠莉ちゃんたち、わざわざわたしと純也さんが二人きりになれるように気を利かせてくれたのかな……?)

 愛美はふとそう考えた。「ブランドものには興味がない」と言っていたさやかまでが、珠莉について行った理由もそう考えれば辻褄(つじつま)が合う。
 さやかは元々友達想いな優しいコだし、場の空気を読むのもうまい。そして何より、彼女は愛美の純也への想いも知っているのだ。