「でも愛美ちゃんは、僕が今まで出会ったどんな女性とも違った」

「えっ?」

 愛美が不思議そうに瞬くと、純也さんは嬉しそうに続けた。

「君には打算なんてひと欠片もないし、逆に『生まれ育った環境なんてどうでもいい』って感じだよね。君は純粋でまっすぐで、僕のことを〝資産家一族の御曹司〟じゃなく、〝辺唐院純也〟っていう一人の人間としていつも見てくれてる。そういう女の子に、今まで出会ったことなかったから嬉しいんだ」

「純也さん……」

 愛美は人として当然のことをしているつもりなのに。今まで偏見やイジメに苦しめられてきたからこそ、自分は絶対にそういう人間にはなるまいと心がけてきただけだ。
 でも――、純也さんは愛美のそんな心がけを〝嬉しい〟と言ってくれた。

「愛美ちゃん、ありがとう。僕は君に出会えてよかったと思ってるよ」

「いえいえ、そんな」

 彼のこの言葉は、受け取り方によっては告白とも解釈できるのだけれど。恋愛初心者の愛美には、そんなこと分かるはずもなかった。

「――あ、そうだ。連絡先、交換しようか」

「え……、いいんですか?」

 自分からは、とてもそんなことを言い出す勇気がでなかったので、愛美の声は思いがけず弾んでしまう。

「うん、もちろん。実は、前々から愛美ちゃんに直接連絡取りたいなって思ってたんだ。それに毎度毎度、珠莉を通して色々ツッコまれるのも面倒だし」

「面倒……って」

 前半は愛美も嬉しかったけれど、後半のひどい言い草には絶句した。実の叔父から「面倒だ」と言われる姪ってどうなの? と思ってしまう。けれど。

「……まあ確かに、直接連絡取り合えた方が便利は便利ですよね」

 という結論に達し、二人はお互いのスマホに自分の連絡先を登録するという方法で、アドレスを交換した。

「――愛美ちゃん、スマホ使い始めて二年目だっけ? ずいぶん慣れてるね」