「ああ、分かった」

(…………えっ? 純也さんまで!? どうなってるの!?)

 ますますワケが分からなくなり、愛美は一人混乱している間に、純也さんと二人きりになった。

「…………あっ、あの……?」

 珠莉ちゃんと何か打ち合わせした? 純也さんはどうして当たり前のように残った? ――彼に訊きたいことはいくつもあるけれど、二人きりになってしまうと緊張してうまく言葉が出てこない。

「さてと。愛美ちゃん、どこか行きたいところある?」

「え……? えっと」

 そんな愛美の心を知ってか知らずか、純也さんがしれっと質問してきた。……何だか、うまくはぐらかされた気がしなくもないけれど。
 それでもとりあえず一生懸命考えを巡らせて、つい数十分前に思いついたことを言ってみる。

「あ……、じゃあ……本屋さんに付き合ってもらえますか? 今日観てきたミュージカルの原作の小説があるらしいんで」

「オッケー。じゃ、行こうか」

「はいっ!」

 二人はそのまま表参道を下り、東京メトロ表参道駅近くのビルの地下にある大型書店へ。

(なんか、こうしてると恋人同士みたいだな……)

 愛美はこっそりそう思う。ただ、まだ本当の恋人同士ではないので、手を繋いでいるだけで心臓の鼓動が早くなっているけれど。

 何はともあれ、愛美はお目当ての小説の単行本をゲットし、二人は近くのベンチで休憩することにした。

「――はい、愛美ちゃん。カフェオレでよかったかな?」

 純也さんは、途中の自動販売機で買ってきた冷たい缶コーヒーを愛美に差し出す。自販機ではクレジットカードなんて使えないので、もちろん小銭で買ったのだ。
 愛美は紅茶も好きだけれど、カフェオレも好きなので、ありがたく受け取った。

「ありがとうございます。いただきます」

 プルタブを起こし、缶に口をつける。純也さんも同じものを買ったようだ。