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「――さっきの舞台、スゴかったねー」
終演後、劇場の外に出た愛美は、一緒に歩いていたさやかとミュージカル鑑賞の感想を話していた。
珠莉はと言うと、愛美たちに聞こえないくらいのヒソヒソ声で、何やら叔父の純也さんと打ち合わせ中の様子。
「うん。あたし、あの作品の原作読んだことあるけど、ああいう解釈もあるんだなぁって思った。やっぱり、ナマの演技は迫力違うよね」
「原作あるんだ? わたし、読んだことないなぁ。この後買って帰ろうかな」
今日の舞台の原作は、偶然にも愛美が好きな作家の書いた長編小説らしい。――もしかしたら、純也さんはそれが理由でこの舞台に誘ったのかもしれない。
(……なんてね。そう考えるのはちょっと都合よすぎかな)
「――さて、お買いものタイムと参りましょうか」
いつの間にか、純也さんたちも二人に追いついていて、珠莉がやたら張り切って声を上げた。
お買いものといえば、毎回テンションが変わるのが彼女なのだ。お金に不自由していないせいか、根っからのショッピング狂のようである。
「ハイハ~イ☆ とりあえず、古着屋さん回ってみる?」
とはいえ、さやかもショッピングはキライじゃないので、愛美が気後れしない提案をしてくれた。
「うん! わたしもそろそろ、夏物の洋服とか靴が見たかったんだ。いいのが見つかるといいな」
古着店なら、たとえ流行遅れでもいいものが安く買える可能性が高い。愛美は流行とかは気にしない性質なので、それくらいでちょうどいいのだ。
「じゃあみなさん、参りますわよ!」
「おいおい。まさか珠莉、俺を荷物持ちでこき使うつもりじゃないだろうな?」
姪のあまりの張り切りように、この中で唯一の男性である純也さんがげんなりして訊ねる。
「あら、私がそんなこと、叔父さまにさせると思って? ――ちょっとお耳を拝借します」
珠莉が叔父に歩み寄り、何やらゴショゴショと耳打ちし始めた。純也さんも「うん、うん」としきりに頷いている。