「はい……! 園長先生、ありがとうございます!」
愛美は嬉しさで胸がいっぱいになった。
――自分の人生。今まで、そんなこと一度も考えたことがなかったし、考える余裕もなかった。
いつも弟妹たちや施設のことばかり考えて、自分のことは二の次で。でも、「これでいいんだ」と思ってきた。
けれど、進路と向き合うということは、自分のこれからの人生と向き合うということなんだと、愛美は気づいたのだ。
――ボーン、ボーン ……。園長室の柱に取り付けられた、年季の入った振り子時計が九時を告げた。
「長い話になってしまってごめんなさいね。明日も学校があるでしょう? そろそろお部屋に戻りなさい」
「はい。園長先生、おやすみなさい。失礼します」
聡美園長にお辞儀をして、愛美は退室した。
(ウソ……? 信じられない! ホントに奇跡が起きちゃった……!)
二階の部屋まで戻る途中、愛美は春から訪れるであろう新しい生活に、ワクワクと少しの不安とで胸を膨らませていたのだった――。