原宿といえば、古着店が多いことでも有名らしい。新しい服を買うよりは、古着の方が価格も安いしわりと掘り出し物があったりもして楽しのかもしれない。

「ああー、ナルホドね。だからお兄ちゃんの服、けっこう奇抜(キバツ)なヤツ多いんだ」

「さやか、そこは個性的って言ってほしいな」

「でも、治樹さんにはよく似合ってると思います。わたしは」

「おおっ!? 愛美ちゃんは分かってくれるんだ? さすがはオレが惚れた女の子だぜ。お前とは大違いだな」

「はぁっ!? お兄ちゃん、まだ愛美に未練あんの? 冬に秒でフラれたくせにさぁ」

「うっさいわ」

 街中で牧村兄妹の漫才が始まりかけたけれど、そこで終了の合図よろしく純也さんの咳払いが聞こえてきた。

「……取り込み中、申し訳ないんだけど。もうすぐ開演時刻だし、そろそろ行こうか」

「……あ、はーい……。とにかく! お兄ちゃん、もう愛美にちょっかい出さないでよねっ! 珠莉、愛美、行こっ」

「うん。治樹さん、じゃあまた」

「またね~、愛美ちゃん」

「治樹さん、またどこかでお会いしましょうね」

 兄に対して冷たいさやか、あくまで礼儀正しい愛美、なぜか治樹さんに対して愛想のいい珠莉の三人娘は、純也さんに連れられてミュージカルが上演される劇場まで歩いて行った。

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「――ゴメンねー、愛美。お兄ちゃん、まだ愛美のこと引きずってるみたいで……。みっともないよねー」

 劇場のロビーで純也さんが受付を済ませている間に、さやかが愛美に謝った。
 珠莉は受付カウンター横の売店で飲み物を買っているらしい。――ついでに気を利かせて、愛美たちの分も買ってきてくれるといいんだけれど。

「ううん、いいよ。わたしも、あんなフり方して申し訳ないなって思ってたの。あんなにいい人なのに」

「愛美……」

「もちろん、わたしが好きなのは純也さん一人だけだよ。治樹さんは、わたしにとってはお兄ちゃんみたいなものかな」