受け取った愛美は、顔を綻ばせた。これは、彼女が好きな人から初めてもらったプレゼントだ。――ただし、〝あしながおじさん〟から送られたお見舞いのフラワーボックスは別として。

「わたし、男の人からプレゼントもらうの初めてで……。ちょうど先月お誕生日だったし」

「そうだったんだ? 何日?」

「四日です」

「そっか。遅くなったけど、おめでとう。前もって知ってたら、こないだ寮に遊びに行った時、何かプレゼントを用意してたんだけどな」

 純也さんが寮を(おとず)れたのは、愛美の誕生日の後だった。

「いえいえ、そんな! わたしは、純也さんが来て下さっただけで十分嬉しかったですよ。あと、ケーキの差し入れも」

「っていうかさ、男の人からのプレゼントって初めてじゃなくない? ほら、おじさまから色々もらってるじゃん。お花とか」

「おじさまは別格だよ。だって、わたしのお父さん代わりだもん」

 いくら血の繋がりがないとはいえ、親代わりの人を〝異性〟のカテゴリーに入れてはいけない。

「あー……、そっか」

 その理屈にさやかが納得する一方で、珠莉は何だか複雑そうな表情を浮かべている。
 この半月ほど――純也さんが寮を訪れた日から後、彼女のこんな表情を、愛美は何度も見ていた。

 ――四人が再び、竹下通りを散策していると……。

「――あれ? さやかじゃん! それに愛美ちゃんも。こんなとこで何してんだ?」

 やたらハイテンションな、若い男性の声がした。それも、珠莉と純也さんはともかく、あとの二人にはものすごく聞き覚えのある……。

「おっ……、お兄ちゃん!」

「治樹さん! お久しぶりです」

「ようよう、お二人さん! だから、なんでここにいるんだっての。――あれ? そのコは初めて見る顔だな。さやかの友達?」

 声の主はやっぱり、さやかの兄・治樹だった。

(……そういえば治樹さんも、東京で一人暮らししてるって言ってたっけ)