「――さてと、そろそろ行こうか。ミュージカルは二時開演だから、それまでに昼食を済ませて、ちょっと街をブラブラしよう」

「「はーいっ!」」

 純也さんの言葉に、愛美とさやかがまるで小学生みたいに元気よく返事をした。

「……この二人、ホントに高校生かしら?」

 珠莉ひとり、呆れてボソッとツッコむ。――彼女には、叔父と愛美たちが「遠足中の小学生とその引率(いんそつ)の先生」に見えたのかもしれない。

 ――それはさておき、四人は駅前のオシャレなカフェでランチを済ませた後、竹下(たけした)通りを散策し始めた。

「――あっ、ねえねえ! このスマホカバー、可愛くない? 三人おソロで買おうよ! 友情のしるしにさ」

 とある雑貨屋さんの店内で、さやかがはしゃいで言った。

「わぁ、ホントだ。可愛い! 買おう買おう♪ ……待って待って。いくらだ、コレ?」

 あまり高価なものだと、愛美は買うのをやめようと思っていた。

 所持金は十分にある。〝あしながおじさん〟からクリスマスに送られてきたお小遣いも、さやかのお父さんからお正月にもらったお年玉(中身は一万円だった!)も、短編小説コンテストの賞金もまだ残っているし、そのうえ四月の末にまたお小遣いをもらったばかりだ。

 でも金額の問題ではなく、愛美は一年前に金欠を経験してから、節約するようになっていたのだ。〝あしながおじさん〟から援助してもらったお金は、いつか独り立ちできたら全額返そうと決めていたから。

「そんなに高くないよ、コレ。二千円くらい」

「じゃあ買っちゃおっかな」

「私はいいわよ。スマホのカバーなら、高級ブランドのいい品を持ってますから」

「いいじゃん、珠莉。買えば。こんな経験できるの、今のうちだけだぞ」

 自慢をまじえて拒もうとする姪に、唯一の男性で大人の純也さんが口を挟んだ。