(……えっ? ウソ……)

 愛美の胸が高鳴った。早く純也さんと話したくて、待っている時間がもどかしい。

「ええ、今代わりますわ。――愛美さん、純也叔父さまがあなたとお話ししたいそうよ」

「……あ、うん」

 彼からの指示だろうか、珠莉がスピーカーフォンにした自身のスマホを愛美の前に置いた。

「もしもし、純也さんですか? わたし、愛美です」

『やあ、愛美ちゃん。純也です。こないだはありがとう。元気にしてる?』

「はい、元気です。――今日はどうされたんですか? お電話、わざわざわたしに代わってほしいなんて」

 大好きな純也さんの声に胸がいっぱいになりながら、愛美はこの電話の用件を彼に訊ねた。

『うん、愛美ちゃんとまた話したくなったから』

「え…………」

『……っていうのも、もちろんあるんだけど。実はね、連休中に東京で公演されるミュージカルの前売りチケットが買えたんだ。四枚あるから、よかったら一緒に観に行けないかな、と思って。珠莉も、さやかちゃんも一緒に』

「ミュージカル……。っていうか、東京!? いいんですか!?」

 純也さんのお誘いに、愛美は目を瞠った(テレビ電話ではないので、純也さんには見えないけれど)。

『うん。ついでにみんなで美味しいものでも食べて、買いものがてら街を散策するのもいいね。横浜(そっち)からなら日帰りで来られるだろうし。――そうだな……、五月の三日あたり。どうかな?』

「えーっと……、ちょっと待って下さいね。二人にも都合訊かないと。――どうする?」

 〝相談する〟といっても、スピーカーフォンなので愛美たちの会話の内容は純也さんに筒抜けである。

「あたし、久しぶりに東京で遊びたい! 冬休みには、ウチの実家に帰る途中で品川でゴハン食べただけだもんね」

「私にとっては、東京は庭みたいなものですけど。大事なのは愛美さんの意思ですわ。あなたはどうしたいの?」