「えっ、そうなの?」

 愛美はものすごくビックリした。だって、一年前にこの学校に来た時だって、彼はあんなにニコニコして上機嫌だったのだ。逆に、機嫌の悪い彼なんて想像がつかないくらいに。

「それってやっぱ、アンタがウザいからじゃん? 違うの?」

「失礼ね!」

 またしても茶々を入れるさやかに、珠莉がムッとした。――ここで怒るのは、図星だからじゃないかと愛美はこっそり思う。

「……まあ、それは置いておくとして。叔父さまがあんなにご機嫌だったのはきっと、愛美さんのおかげかもしれませんわね」

「えっ? わたし?」

 愛美はまたビックリ。珠莉の言う通りだとしたら、一年前も愛美が案内役だったから上機嫌だったということだろうか。

「ええ。愛美さんのこと、すごく気に入ってらっしゃるみたいよ。よかったですわね、愛美さん」

「…………そうなんだ」

 愛美はその言葉がまだしっくり来ず、顔の火照りをうまくごまかせない。

(気に入ってるって、どっちの意味だろう? 姪っ子の友達として「あのコはいいコ」って意味? それとも、一人の女の子として……?)

 これは、この恋に希望があるということだろうか?
 でも、本当に有りうるんだろうか? あのステキなイケメンの(もちろん顔だけじゃないけれど)、しかもセレブの(愛美はそんなこと、別にどうでもいいと思っているけれど)純也さんが、こんな十三歳も年下の普通の女子高生に気があるなんて……!

「ええ、そうなのよ。『また会いたいな』っておっしゃってましたわよ」

「…………」

(珠莉ちゃん、一体どうしちゃったの? なんか今までになく、すごくわたしに協力的になってくれてる)

 もちろん珠莉も、さやかと同じく愛美が純也さん(叔父)に恋心を抱いていることは知っている。けれど、彼女は今まで、ただ静観(せいかん)しているだけのポジションだった。