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「――さやかちゃん。珠莉ちゃん、純也さんとどんな話してるんだろうね? わたし、珠莉ちゃんのあんな剣幕初めて見たよ」
先にさやかと二人、三階の部屋に戻ってきていた愛美は、私服に着替えながらさやかに話しかけた。
「さあ? でも、あたしたちに聞かれちゃ困る話だってことは間違いないよね。内々で何かあるんじゃない?」
親戚同士には、他人が踏み込んではいけない問題もあるのかもしれない。たとえそれが親友であったとしても。
「多分、訊いても珠莉も教えてくんないと思うよ。――愛美、洗い物するから、テーブルの上の食器、キッチンまで持って来て」
「うん、分かった」
愛美はお盆をうまく利用して、お皿・フォーク・ティーカップと受け皿・ティーポットをキッチンまで運んだ。
「それだけの量、一人じゃ大変でしょ? わたしも手伝うよ」
「サンキュ。じゃあ、洗い終わった分を食器カゴに置いてくから、拭いて食器棚にしまってってくれる?」
――二人が手分けして片付けをしている間に、珠莉がひょっこり帰ってきた。
純也をつかまえてひっぱっていった時の剣幕はどこへやら、何だか上機嫌だ。何があったんだろう?
「……あ、おかえり、珠莉ちゃん」
「ただいま戻りました。あら、お二人で片付けして下さってたの? ありがとう」
「いや、別にいいけど。アンタが素直なんて気持ち悪っ! 何かあったの?」
「さやかちゃん……」
親友に面と向かって「気持ち悪い」と言ってのけるさやかに、愛美は絶句した。
(それ、思ってても口に出しちゃダメだって)
そう思っているのは愛美も同じだけれど、間違っても口に出して言ったりはしない。施設で育ったせいなのか、場の空気を読みすぎるくらい読んでしまうのだ。
「叔父さま、無事にお帰りになったわ。それにしても、あんなに上機嫌な叔父さま、初めて見ました。いつもはあんな風じゃないのよ」