「へえ、大賞? スゴいじゃないか。おめでとう」

 純也さんは目を大きく見開いたあと、愛美に「おめでとう」を言ってくれた。
 〝あしながおじさん〟からはとうとう言ってもらえなかった言葉。でも、純也さんに言ってもらえたので、もうそんなことはどうでもいいように愛美には感じられた。

「ありがとうございます。――援助して下さってるおじさまにも手紙でお知らせしたんですけど、何も言って下さらなくて。わたし、ちょっとヘコんでたんです。でも、純也さんに言ってもらえたからそれで満足です」

「そうなんだ……。まあ、彼もどう伝えていいか分からなかったんだろうね。女の子が苦手みたいだし」

「え……?」

(どうしてこの人が、そのこと知ってるの……?)

 愛美は純也さんをじっと見つめる。――一年前に、〝あしながおじさん〟のことは話したと思うけれど。そのことはまだ話していないはずなのに。

「ええ、まあ、そうらしいんですけど。どうして純也さん、そのことご存じなんですか? わたし、まだお話ししてませんよね?」

 回りくどいのはキライな性分(しょうぶん)の愛美は、正面から疑問をぶつけてみた。

「それはね……。実は僕と彼は、同じNPO法人で活動してるんだよ」

「NPO法人?」

 オウム返しにする愛美をよそに、珠莉が何やら怪訝(けげん)そうな視線を向けているけれど。愛美はそれには気づかない。

「うん。全国の児童養護施設とか、母子シェルターとかを援助してる団体でね。彼もある施設に多額の援助をしてるって言ってた。でも、まさかそこが愛美ちゃんのいた施設だったなんてね。初めて知った時は驚いたよ。世間って狭いんだなーって」

「そうだったんですか……」

 愛美は妙に納得してしまった。
 同じような年代で、同じ(こころざし)を持つ二人の資産家が同じ団体で活動。偶然が重なりすぎているような気もするけれど、まあそういうこともあるだろう。