「まず、受験するように勧められた高校なんだけれど。横浜にある女子大付属高校なの。――ここよ」
園長がそう言って、ローテーブルの上にパンフレットを置いた。それは、高校の入学案内。
「私立……茗倫女子大学付属……。県外なんですね」
愛美は表紙に書かれた文字を読んだ。本当は県内の高校がよかったのだけれど、そんなわがままを言っていい立場ではないことくらい、彼女自身も分かっている。
「そうなの。ここは名門の女子校でね、全寮制なの。寮に入れば、住むところには困らないだろうって。それでね、愛美ちゃん。学校や寮の費用は全額あの方が負担して下さって、直接学校に振り込まれるんだけれど。そのうえで、あなたにも毎月お小遣いを下さるそうなのよ。一ヶ月で三万五千円も」
「さ……っ、三万五千円!? すごい大金……」
高校生のお小遣いにしては、多すぎはしないだろうかと愛美は目を瞠った。
「そうよねえ。ここにいる間、あなたには十分なお小遣いをあげられてなかったものねえ。でもね、あの学校でやっていくには、その金額が最低ラインなんじゃないかってあの方がおっしゃるのよ」
「そうなんですか」
そういえば、〝名門〟だと園長先生がさっき言っていたっけ。お嬢さま学校でみんなと同じように生活していくには、やっぱりそれくらいのお金が必要なのだろうか。