もちろん、この贈り物が嬉しかったからでもあるけれど。〝あしながおじさん〟のことが信じられなくなって、あんな最低な手紙を書いてしまった自分が情けなくて、腹立たしくて。

(……わたし、バカだ。おじさまはこんなにいい人なのに。返事がもらえないことも分かってたのに、あんなことして、おじさまを困らせて)

 愛想を尽かされても仕方のないことをしたのに、お見舞いのお花に手書きのメッセージカードまで送ってくれた。――愛美は今日ほど、〝あしながおじさん〟の存在をありがたいと思ったことはない。

 愛美はそのまま、看護師さんが困惑するのもお構いなしに、声を上げて泣き出した。
 泣くのなんて、〈わかば園〉を巣立った日以来、約一年ぶりのことだ。あれからの日々は、愛美に涙をもたらさなかった。もう泣くことなんてないと思っていたのに。

「ほらほら、相川さん! あんまり泣くと、また熱が上がっちゃうから」

 オロオロしつつ、看護師さんがボックスティッシュを差し出す。それで涙と鼻水をかむと、数分後には涙も治まった。

「――あの、看護師さん。ペンとレターパッド、取ってもらってもいいですか?」

 気持ちが落ち着くと、愛美は看護師さんにお願いした。

「お礼の手紙、書きたくて。他にも書かないといけないことあるんで」

「……分かった。――はい、どうぞ。じゃあ、私はこれで。お大事に」

「ありがとうございます」

 看護師さんが病室を出ていくと、愛美はテーブルの上のペンをつかみ、レターパッドを広げた。
 〝あしながおじさん〟にお礼を伝えるため、そしてきちんと謝るために。